書評

【書評・感想】NINE LIES ABOUT WORK 仕事に関する9つの嘘【やっぱり間違ってた】

2022年8月19日

書籍

NINE LIES ABOUT WORK 仕事に関する9つの嘘

NINE LIES ABOUT WORK 仕事に関する9つの嘘
マーカス・バッキンガム(著)、アシュリー・グッドール(著)、櫻井 祐子(翻訳)
サンマーク出版 / 2020年06月16日

評価 :4/5。

書評

本書は仕事に関してよく言われる9つのことをそれぞれ独立した章で深掘りしています。例えば1章では「働く会社が大事である」という内容が正確ではないことについて触れられています。会社間の違いよりもチーム間の違いの方がばらつきが大きいため、企業文化など会社単位で発信している情報をもとに就職先を決めることにリスクがあることを示しています。これは人種に対する違いよりも個人の違いの方が大きいため、ステレオタイプ的な理解が問題になることと似ているように感じます。

最初の3つの章では組織文化や計画、目標といった企業の組織としての側面から議論を進めます。計画や目標などは特に従業員個人のものは半期や四半期ごとに見直すのが大企業の常識だと思いますが、これもさほど効果がないことが示された上でより意味のある方法が述べられています。実感としても納得できるものであり腹落ちします。続く4章では個人の人間としての性質についての内容になります。ここでもフィードバックや360°評価など、大企業で一般的に使われている方法があまり意味がないことが示されます。上司や同僚を5段階の質問項目で評価するというのがよくありますが、情報の非対称性(評価者が被評価者をよく知らない)とか評価者の回答傾向(1や5の極端な解答が少ない、とか)のせいで意味のある評価結果にならないようです。最後の二つの章ではワークライフバランスとリーダーシップについて述べられます。特にリーダーシップについては常識を覆すような内容でしたが、同時に納得できるものでもあり、非常に面白かったです。やはり自分はリーダーには向いていないなと思いました。

タイトルは嘘という少し強い言葉を使っていますが、マーケティング上刺激的な表現にしているだけと理解した方が良いかもしれません。9つのいずれも完全に間違っているというわけではなく、誤解を招く可能性があるとか注意すべきといった認識の方がより解像度高く本書を理解できると思います。大企業で働く人であれば「やっぱりそうだよね」と思えるようなことが科学的に指摘されていくので、非常に痛快な内容でした。