書評

【書評・感想】教養としての「地政学」入門【地理的関係から政治を解釈する考え方】

2021年6月6日

書籍

教養としての「地政学」入門

教養としての「地政学入門
出口 治明(著)
日経BP / 2021年02月05日

評価 :4/5。

書評

政治現象と地理的条件との関係(=地政学)についてエッセイ的に語られている書籍です。様々なトピックが平易な語り口調で述べられており、この分野に疎い方でも簡単に読み進められると思います。

地政学の定義から始まり、陸と海の観点から歴史上の地政学的事柄について語られます。陸はローマ教皇領やプロイセンとフランスなどの事例が挙げられています。敵国や強敵をいかに地理的にサンドイッチにするか(孤立させられるか)が重要になります。海は半島や海峡といった地形とシーレーン(海上交易路)がポイントとなります。主に西欧の事例が取り上げられており、最後は旧大陸と新大陸を通じた大西洋について語られます。

その後は日本の地政学についての章が続き、最後に地政学の古典について著者の解釈が述べられていきます。この古典は1919年にH・J・マッキンダーによって著された「デモクラシーの理想と現実」という書籍です。最後に、この書籍の解説の中で私が特に面白いと感じた記述を引用します。

「歴史上の大戦争ーわれわれは過去四半世紀間に、ほぼ百年に一度の割で国際的な戦争を体験してきたーは、ことごとく直接または間接的に国家間における成長の度合いの不均衡から端を発している。が、その成長の不均衡の理由は、必ずしもある国民が他の国民にくらべて、より天分やエネルギーに恵まれていた、ということだけではなかった。その多くの原因は、この地球上における資源の賦存状況や戦略上の利不利に、かなりのむらがあることに求められる。言葉を変えれば、およそ自然の中には、はじめから諸国にとって機械の均等というようなことはありえないはずだ。」

教養としての「地政学」入門