書評

【書評】古代史講義 ーー邪馬台国から平安時代まで【古代日本の新知見】

2020年6月14日

書籍

古代史講義 ーー邪馬台国から平安時代まで
佐藤信(著)
筑摩書房 / 2018年01月10日

評価 :4/5。

概要

古代日本の歴史は昨今の科学の進歩によって、これまで教科書で語られてきた内容に誤りが見つかったり、より合理的な解釈に変更になったりと大きくアップデートされています。時代順に15のトピックについての専門家による解説です。特に印象的だった事項について述べていきます。

卑弥呼時代の交易

卑弥呼の時代には邪馬台国の所在地論争と相まって近畿と九州のどちらが中国王朝との交易が盛んだったのか、という観点がメインでした。しかし、山陰地方や東海・北陸地方からも大型建造物や土器などが発掘されており、日本列島全体に交易ネットワークが行き渡っていたことが示唆されていることが分かります。

摂政と関白

幼少天皇の代わりに政務を代行するポジションを『摂政』、天皇成人後に政務を補佐するポジションを『関白』というのが日本史で教えられている定義です。これは誤りという訳ではないですが、もう少し大極的に捉えると天皇制を補完する制度の始まりと言えるようです。ヤマト政権の大王制と中国由来の皇帝性を混ぜ合わせて始まった天皇制は、皇位継承者が極端に限定されたため皇統断絶や能力のない人が即位すると言った問題があり非常に不安定な制度でした。

摂関は天皇家と縁戚関係にある家から輩出されることが多かったですが、厳密な決まりではなかったので優秀な人を選抜することができ、身内だからこそ天皇に忖度しすぎることなく政務を補佐することができたと考えられています。特定の家系から政治を切り離すことで政治の安定性を保つという意味では、現在の内閣制と同じ構造と言えると思います。