書評

【書評】不道徳な見えざる手【自由市場の構造により消費者がカモにされる】

2020年6月6日

書籍

不道徳な見えざる手

不道徳な見えざる手
ジョージ・A・アカロフ(著)、ロバート・J・シラー(著)、山形浩生(翻訳)
東洋経済新報社 / 2017年05月12日

評価 :4/5。

概要

ノーベル経済学賞を受賞した2人の著者による、自由市場におけるデメリットを様々な事例をもとに明らかにしていく書籍です。自由市場の構造に消費者がカモにされる仕組みが組み込まれており、広告・医薬品や金融などあらゆる分野で見られます。

自由市場による競争圧力

本書での主な主張は経済理論で想定されているように利己的に行動するのであれば、ごまかしや詐欺が横行することになるということです。個人的には詐欺とまで言ってしまうのは少し極端な解釈のようにも感じます(訳者あとがきでも本書の解釈について述べられています)。

例えば広告の目的はあくまでも商品を購入してもらうことであり、消費者に対してその商品を購入した場合の体験を物語として提供します。この商品が実際に消費者にとって有益かどうかは広告を出す側にとっては関係なく自由市場は機能するので、消費者にとって無価値な商品であっても同じように宣伝し儲けを得る動機が一部のビジネスマンにはあることになります。

独立機関による自由市場の規制

このような詐欺(本書では「釣り」と表記)を防ぐためには独立した機関による調査や規制が必要不可欠であると述べられています。