書籍
リデザイン・ワーク 新しい働き方
リンダ・グラットン(著)、池村 千秋(翻訳)
東洋経済新報社 / 2022年10月14日
書評
有名なライフ・シフトの著者の新著です。従来の教育・仕事・余暇という伝統的な3ステージ制の人生から、柔軟にこのステージを行き来する新しい人生観へシフトする必要があると前著ライフ・シフト2で述べられていました。本書ではこういった人生観に対して、どのように企業側が組織を再構成していくかを豊富な実例を挟みながら、分かりやすくその方法について述べられています。
レヴィンのモデルによれば、平常時の組織は「凍結」状態にあるとされる。組織の文化、構造(指揮命令系統など)、慣行(給料の金額など)、プロセス(採用活動の進め方など)は安定している。しかし、組織が外部からの脅威にさらされると、この状態が変わり始める場合がある。外的な脅威として、たとえば、新しい競争相手が市場に参入する、顧客が製品やサービスに満足しなくなる、優秀な社員の退職が相次ぐなど、さまざまなパターンがありうる。こうした脅威に直面すると、その会社は「凍結」状態から「解凍」状態へ移行する。組織構造が流動化し、幹部たちは古い前提に疑問を投げかけ、新しいやり方を試みはじめる。組織が変化を遂げはじめるのだ。しかし、やがて脅威が遠のくと、その会社は「再凍結」の状態に移行する。イノベーションと変革ではなく、停滞と安定の時代が再び訪れるのである。
リデザイン・ワーク
20年以上経済が停滞し、優秀な人材が外国企業に流出している現在、製造業をはじめ多くの日本の伝統的な企業は「解凍」状態に移ってきていると思います。本書で紹介される組織再構成の方法は決してすべての組織に通用するようなベストソリューションではなく、それぞれの組織が自分に合った方法を見つけ出す必要があります。そのためのプロセスは、1. 理解する → 2. 新たに構想する → 3. モデルをつくり検証する → 4. 行動して創造する、という試行錯誤をベースにしています。いわゆるPDCAに「1. 理解する」というプロセスを加えた形になっていますが、一時の流行にせずに意味のある変化を生み出し定着させるためにも重要であると述べられています。本書の構成としては上記の4つのプロセスについて独立した章が設けられ、基本的な考え方について述べられます。その後、コロナ禍において実際に組織を変革した企業や自治体の事例をふんだんに紹介されています。
試行錯誤に基づいて組織にあった最適な働き方を構築する、というと一見当たり前のように感じます。しかし実際に組織を変革し定着させるにはさまざまな課題が出てきます。働く場所はオフィスが良いか自宅などリモードが良いか、働く時間は9時から17時の固定にするべきか、などさまざまな観点があり、組織ごとに最適解が異なることは言うまでもありません。また、同じ組織であっても職種によっても異なります。既存の組織構造を変革したいビジネスマンや転職・就職で新しい職場を選択する機会のある方には参考になる書籍だと思います。