書籍
Chatter―「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動を導くための26の方法
イーサン・クロス(著)、鬼澤 忍(翻訳)
東洋経済新報社 / 2022年11月18日
書評
本書では内省を「自分自身の思考や感情へ積極的に注意を向けること」と定義しています。内省は普段は素晴らしいものと理解されていますが、時には自分を苦しめてしまい、これをチャッターと定義しています。
チャッターを構成するのは、「循環するネガティブな思考と感情」だ。こうした思考や感情は、内省という素晴らしい能力を祝福ではなく呪いに変えてしまう。私たちの行動、意思決定、人間関係、幸福、健康を危険にさらすのだ。私たちは仕事での失敗や恋人との諍いについて考え、最後には否定的な感情で頭の中がいっぱいになってしまう。それから、再びそのことを考える。さらにまたしても考える。私たちは内省によって「内なるコーチ」に助けを求めようとするが、それに代わって「内なる批判者」に出くわすのだ。
Chatterー「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動を導くための26の方法
よく「辛いことがあった時に誰かに話すと楽になる」と言いますが、これは必ずしも正しくはなく、逆に何度も反芻することがネガティブ思考を強化することにつながってしまうこともあると言います。よく考えると確かにありそうな話ではあります。
タイトルにもあるとおりチャッターを上手く扱う方法が次々と述べられていきます。例えば、自分の経験をあえて一般化することで思考との距離を取るといった考え方、自然に触れることで注意力を向上させるような物理的な外部環境によって改善できるなど、多面的かつ具体的な方法を学ぶことができます。また、プラセボ(偽薬)効果もチャッターに対して有効であることも分かります。
チャッターという聞き慣れないが自分の中に常にある概念だけでなく、その有効性と危険性も併せて学ぶことができました。自分の経験と照らし合わせて理解することができる内容であり、非常に示唆に富んだ書籍だと思います。