書評

【書評・感想】危機の地政学 感染爆発、気候変動、テクノロジーの脅威【民主国家と中国は協力できる】

2023年1月29日

書籍

危機の地政学 感染爆発、気候変動、テクノロジーの脅威 (日本経済新聞出版)

危機の地政学 感染爆発、気候変動、テクノロジーの脅威
イアン・ブレマー(著)、ユーラシア・グループ日本(翻訳)、新田 享子(翻訳)、稲田 誠士(監修)
日経BP / 2022年10月04日

評価 :4/5。

書評

アメリカと中国という思想の異なる大国を中心とした世界構造をベースに、アメリカ国内の分断と米中間の関係について語られます。世界は国境を越えることを止められないグローバルな三つの課題、すなわちパンデミック・気候変動・急激な技術革新、を抱えています。軍事・政治・通商のそれぞれでぶつかり合う両大国がいかにグローバルな課題に対して協調して対処できるかが未来を決めると述べられます。

特に気候変動のグローバルな影響が具体的に述べられ、その影響が自国だけに留まらないことがわかります。特に全く関係なさそうな難民や国民の分断につながるというのも納得間のある説明がなされます。

本書では中国との付き合い方が裏テーマになっているように感じます。中国は西側の民主国家とは違う原理で動いていますが、著者は協調することは可能だと述べています。決して感情的にならず、現実的に中国と西側の国家が協力する未来を信じており、希望の持てる書籍だと思います。

最後に、データの扱いに関する提言を引用します。

ここでの目標は、中国を「負かす」ことではなく、むしろ、中国を世界の国々と協力し合うよう促すことだ。だが、中国が民主国家になるわけではない。中国の指導者たちは、欧米市場への参入を阻まれては、真の国家安全保障を達成できないと知っている。欧米市場が中国の繁栄の基礎になっているからだ。要するに、世界データ機関のような組織は、中国の権威主義的なインターネット、データ、AIに代わる選択肢、中国でさえも採用できる代替案を提供できるのだ。

危機の地政学