書籍
日本の伸びしろ 悲観を成長に変える思考力
出口 治明(著)
文藝春秋 / 2022年10月20日
書評
日本が抱える様々な課題を先進国との比較から明確化し、具体的な提言が語られます。歴史に造詣の深い著者らしく、所々に歴史から見た観点で日本の課題を捉えています。根底にあるのは人間は未来の課題を予想できるほど賢くはなく、歴史的に悲観論はほぼ外れてきたと言う主張のように感じました。
本書では日本が抱える課題に対する解決策として、高学歴社会・女性活躍・ダイバーシティが挙げられています。夫婦別姓が認められなくなったのは割と歴史の浅い話で日本の伝統と言えるほどのものではないといったように、興味をそそるような事実を交えて議論が展開されていき、サクサク読み進めることができました。
日本は先進国の中でもいち早く高齢社会に突入するなど課題先進国と言えます。高齢社会や経済の停滞など難題がたくさんあるにもかかわらず豊かな生活を送れる日本は、むしろ伸びしろのある先進国と解釈できるのかもしれません。最後に、選挙について印象に残った部分を引用します。
若い世代には「投票したい候補者がいないから、選挙に出かける気にならない」と言う人がいます。この意見は、前提が間違っています。「政治家というものは、魅力あふれる優秀な人物がなるべきだ」という考えが根底にあるからです。政治家になりたがっている人間に、どれくらいまともな人物がいるでしょうか。冷静に考えれば、わかると思います。「まともではない人たちの中で、相対的にちょっとはマシな人物を選ぶ忍耐のことを占拠と呼ぶ」。これは二〇世紀を代表する連合王国の政治家ウィンストン・チャーチルの言葉です。政治家を志す人たちの大部分はまともではない。目立ちたがり屋であったり、モテたいと思っていたり、私腹を肥やそうとたくらんでいたり、ろくでもない人間ばかり。そんな連中ばかりが立候補しているのだから、他の候補者に比べて「ちょっとはマシかな」と思える人物を見つけだすのは忍耐がいる仕事だと。