書籍
フランス史 中世〈2〉
ジュール・ミシュレ(著)、桐村 泰次(翻訳)
論創社 / 2016年12月01日
書評
ジュール・ミシュレによるフランス史の第二巻で、西暦1000年から十三世紀のルイ九世の時代までを扱っています。
最初の数章は十字軍に焦点を当てており、ヨーロッパとアジア、およびキリスト教とイスラム教がどのように出会い、関わり始めたのかが語られます。
十一世紀の世界は、その多様性のなかで、《宗教》という共通の生命原理と、封建的・戦士的という共通の形をもっていた。この世界を一つに統合できるのは一つの宗教戦争のみであった。この世界を引き裂いていた民族的多様性や政治的利害対立は、もっと大きく普遍的な多様性を前にしたときにこそ忘れることができた。充分に大きな普遍的多様性が現れたときには、それ以外のものは全て消え失せる。ヨーロッパが一つであることを自覚し、また一つになれるのは、アジアを前にしたときである。西暦一〇〇〇年以後の法王たちは、まさに、そのために働くこととなる。
フランス史 〈2〉
続く章では、ウイリアム一世(ウィリアム征服王)に始まり、ルイ七世とヘンリー二世、フィリップ二世(尊厳王)とリチャード一世(獅子心王)などフランスとイングランドの対立が描かれます。法王や皇帝、封建領主と協力したり、時には裏切ったり、その時々の状況に応じて様々な判断を下していきかなり複雑な時代だったと思います。登場人物やその勢力圏を把握しないとなかなか理解が難しいです。
この時代にはエロイーズやアリエノール・ダキテーヌなど女性が重要な位置を占める例が現れ始め、女性開放の萌芽と言えるような出来事が盛り込まれています。また、宗教よりも商業を優先する動きも現れ始め、早くもこの時代から近代化の芽が出始めていたことが分かります。