書評

【書評・感想】科学の発見【科学的手法が確立されるまでの歴史】

2022年5月2日

書籍

科学の発見 (文春e-book)

科学の発見
スティーブン・ワインバーグ(著)、赤根洋子(翻訳)
文藝春秋 / 2016年05月10日

評価 :4/5。

書評

過去の偉大な科学者・哲学者の考え方の現代科学との違いを描き出すことで、現代科学の発見がいかに難しかったかを明らかにすることを目的としている書籍です。現代科学の観点から過去の科学者・哲学者の考え方や手法を批評することの是非は歴史学者からはタブーとされているものの、プラトンやアリストテレス、デカルトといった人物に軽くダメ出ししながら議論が進んでいくため非常に分かりやすいです。

本書は四部構成となっており基本的に時系列に記述されています。第一部と第二部で古代ギリシャの物理学と天文学について論じるところから始まり、第三部では中世の時代にどのように古代の知識が保存されたのか、第四部では現代科学とそれ以前を分ける転換点としての科学革命という流れとなっています。

一番印象的だったのは古典期の哲学者が誰一人自分の理論を検証しようとすらしていなかったということです。中世の時代の科学者がこういう姿勢だったのはなんとなく理解できますが、まだキリスト教に支配される前の古代の科学者すら検証する姿勢がなかったというのは、著者の言うとおりこの時代を買い被りすぎていたんだなと感じました。

最後に本書のタイトルについて引用しておきます。

最初、私は「The Invention of Modern Science = 現代科学の発明」というサブタイトルを考えていた。結局のところ、科学を実践する人間の存在なしには、科学自体も存在し得ないものだからである。それを「発明」から「発見」に変更した理由は、「科学は、たまたま成し遂げられたさまざまな発明の歴史としてあるわけではなく、自然のありようこそが、科学のありようを決めているのだ」ということを指摘するためだった。現代科学は自然というものに合わせてうまくチューニングされた技術であり、未だ不完全とはいえ、この技術はちゃんと機能している。それは、世界について確かな事実を知るための実践的な方法である。この意味で、科学とは人類に発見されるのを待っていた技術なのである。