書籍
自由になるための技術 リベラルアーツ
山口周(著)
講談社 / 2021年03月03日
書評
本書はリベラルアーツの重要性を哲学、歴史、宗教などのトピックごとの専門家と著者との対談形式で述べられている書籍です。
己を縛り付ける固定観念や常識から解き放たれ、”自らに由って”考えながら、すなわち、自分自身の価値基準を持って動いていかなければ、新しい時代の価値は創り出せない。
自由になるための技術 リベラルアーツ
対談相手は中西輝政氏、出口治明氏、橋爪大三郎氏、平井正修氏、菊澤研宗氏、矢野和男氏、ヤマザキマリ氏の7名。個人的には菊沢さんとの対談が非常に新鮮に感じました。リベラルアーツを倫理観を醸成するものという視点から捉えており、得すると分かっていても個人の倫理的価値判断によって抑止できるかどうかがリーダの資質だと述べています。その他の対談者についてもそれぞれの専門性からリベラルアーツを学ぶことの重要性を明瞭に述べられており視点が広がります。
一方で、全体を通して本書の著者からは若干の理系に対するコンプレックスのようなものを感じます。リベラルアーツ(≒教養)の重要性について対談相手はフラットに意見を述べられていて面白いですが、著者に関してはいまいちロジックが弱く言葉遊びのように思える箇所もあります。特に上記で引用した問題への対策がリベラルアーツでなければならない理由が本書からは分かりませんでした(他の方法でも良いのでは?)。リベラルアーツはこれからの時代に必要不可欠のもの(need to have)と言っていますが、著者の主張からはあくまでも一部のエリートだけが持っていれば良いもの(nice to have)としか感じられませんでした。本書ではデータ偏重主義への危惧にも触れられていますが、データはあくまでも使い方次第なので、多様な視点からデータを解釈・運用できるようにリベラルアーツを学ぶことは意味があるのかなと思います。